久しぶりに100万円オーバーのハイエンドモデルのご紹介です。

Mola Mola(モラモラ)がメーカー名となります。2012年創業のオランダのメーカーです。

歴史はそれ程ありませんが、デジタル関連モデルで良い物を開発しているかメーカーは、新興メーカーが多く Mola Mola もそんな一社です。

今回ご紹介する Tambaqui DAC (タンバキ)はDACですが、少し特殊なDACとなります。
それは、ネットワーク接続可能なのにDACという点です。

これは、ネットワーク接続しても通常のネットワークプレーヤーとしては使用出来ないことを意味します。
ネットワークプレーヤーはDLNAという汎用通信規格を使用して、データのやり取りを行う一般的なネットワーク機器です。
そのため、ネットワークプレーヤーはネットワークへ接続するとPCから認識可能です。ですが、このDACはネットワークへ接続してもPCから認識することが出来ません。

では、このネットワーク接続は何をするのかというと Roon Ready 接続専用なのです。
余計な負荷となる、DLNA/OpenHome を最初から排除して Roon 再生に特化してあるのです。

この方式を始めて見たときは、ついにこの時代が来たかと興奮しました。
Roon Ready接続しか受け付けない、ネットワークプレーヤー(もはやネットワークプレーヤーとは呼ばないと思いますが)の誕生です。

オーディオは基本的にシンプルが一番です。
何でも接続出来るより、それしか出来ない(今回はRoon Ready接続)機材の方がその一点に関しては有利となります。

そこまで割り切った機材は、他に知りません。
(直後に似たコンセプトの機材がもう一台発売になったのですが・・・この話は次回に取っておきます)

横幅 200mm 高さ 110mm 奥行き 320mm とコンパクトですが 5.2Kg と見た目以上に重たいです。

さすがハイエンドモデルだけあって、デザインにも凝っています。

アナログ出力にはRCA出力が無く、バランス(XLR)出力のみという、こちらも割り切った設計です。

このDACのD/Aコンバーター部は完全ディスクリートで組んであり、DACチップは使用されておりません。
さらに、アナログ出力部にもオペアンプは使用されておらず、DAC部同様にディスクリートで組んであります。

このように、拘りの塊のDACとなっており、設計者の執念が感じられる仕上がりとなっています。

私は、音さえ良ければオペアンプだろうがDACチップだろうが否定派ではありませんが、このように完成されたディスクリート機器を見ると、オーディオマニアの部分が疼きワクワクします。

試聴はこのDACのボリューム機能を使用したDACプリから始め、次に音量を固定したダイレクトモードにて試聴しました。

このDACプリモードと、ダイレクトモードの音作りは大きく違い、全く別物として考える必要があると感じました。ある意味、1台のDACで2台分の音色が楽しめてお徳です。さらに各入力ごとに個性を持つため、試聴は大変でした。

このDACは出力電圧を 0.6V / 2V / 6V から選択可能です。
通常のオーディオ製品は 2V 出力で設計されている物が多かったのですが、最近は2V以上の出力を持つモデルが多く出てきました。
経験的に出力電圧は高い方が音が良いので、アンプ側が受けることが出来るのであれば、6Vでの出力がおすすめです。
試聴は6V出力で行いました。

基本として、全ての入力/モードで、位相特性良好ですので、それに関しては触れません。

■DACプリモード

DAC側のデジタルボリュームで音量調整を行い、パワーアンプやプリメインアンプのボリュームを固定して使用します。

■同軸デジタル入力

全てのモード中最大の個性を持つ入力で、もはや原音は存在せずこのDACの個性のみで成り立つ世界です。
たっぷりと色付けされた世界で、ゆったりとした甘い世界を再現します。
エッジは程よく丸くなり、刺激的な音は出ませんが、不思議とそれが不満に感じません。
通常ここまで丸くしてしまうと、欲求不満になるのですがこの世界観に丸め込まれてしまい、このままで良いかな、という気分にさせてくれます。
まさに、オーディオの音の行き着く先という感じで、情報量がどうの、解像度がどうのと、文句を言う気が起こりません。

■USB入力

同軸デジタル入力と比較すると、かなり正統派に近くなりますが、やはり強い個性を感じます。
やや輪郭を強調された、低域、甘みを増した中域、耳当たりの良い高域と、高い次元でバランスが取ってあり聞いていて、疲れません。

■Roon Ready接続

3入力中最も原音に近くなりますが、やはり個性を感じます。
低域と、高域は個性が薄くなりますが、中域にまだまだ砂糖がまぶしてあります。

DACプリモードは、完全にハイエンドオーディオの世界で、オーディオの音を楽しむモードとなっています。

■ダイレクトモード

DAC側のボリュームをバイパスして、ダイレクトに出力されるモードです。

■同軸デジタル入力

DACプリモードで使用したときと同じ機材とは思えません。個性は薄くなり、きっちりと音源に忠実な再生音が出てきます。
それでも薄化粧を感じますが、DACプリモードの印象が強烈なためほとんど気になりません。

エッジも程よく立ち、うるさい音もそれなりに出てくるようになりました。
密度感のある充実した音で 150万円のCD再生用DACとしてのクオリティをしっかり持っています。

■USB入力

同軸デジタル入力と比較して、さらに個性が薄くなります。
エッジは立ち、滑らかさも出てきます。うるさい音もきっちりうるさくなり、曖昧さが薄くなります。USB/DACとして最高峰のクオリティを持つと思います。

■Roon Ready接続

このモード、この接続で本領発揮したと感じました。
6Vという出力の高さをフルに使ったダイナミックレンジの広さを生かした、ダイナミックかつ躍動感溢れる再生は見事です。
どこまでもナチュラルかつ滑らかに伸びる高域はこのDACならではの魅力で、高域の再生に関して、今まで聞いたどのモデルより好印象を持ちました。
中域も見事な再生で、エネルギー密度が高く緻密で滑らかです。
低域は肥大する事無く、引き締まったエネルギーが塊で出てきます。
低域方向のレンジも十分広く、ナチュラルに沈み込んでいきます。

どのモード、どの入力でも一貫して良好な位相特性を持ち、情報量もデータ全てを正確に音へ変換しているのでは、と感じるほど多いです。
特に空間の再現性能が高く、ノイズに埋まり聞こえなかった空間ノイズ(空調音やアンプのファンノイズ等)が、そこにいるかのようにリアルに聞こえたのは新鮮な驚きでした。

150万円と驚くほど高価ですが、その価格に見合う実力を持った、高性能DACだと思います。

現時点で Roon を最も良い音で再生出来る機材の1台ではないでしょうか。