去年発表したベストバイが好評でしたので、今年も発表させていただきます。
去年ランクインしたモデルを入れても面白くありませんので、去年ランクインしたモデルは除外しております。
選定基準は「音質に対するコストパフォーマンス」のみです。
出した金額に対して、どれだけの音質が手に入るかを基準として選択しております。
音のみで判断しておりますので、デザイン等の付加価値はあまり考慮しておりません。
これは吉田苑の基本的なスタンスでもあり、音楽を聞くための道具としての機能を重視しております。
もちろん、デザインが良いに越したことはありませんが、音質とデザインの選択を迫られた場合、音質を選択します。
1位 DENON PMA-800NE 定価 77,000円(税込) DCD-800NE 定価 66,000円(税込)
これは文句なしのベストバイ1位と言って良いと思います。
実売価格が信じられないほど安いですからから、これ以上コストパフォーマンスの高いセットは見当たりません。
エッジの立った見通しの良い明快な表現と、良好な位相特性、情報量、解像度等、入門クラスとは思えない充実した内容で上位モデルを脅かす高音質モデルです。
特にCDプレーヤーのDCD-800NEは良く出来ており、CDプレーヤーで迷ったらとりあえずこれを買っておけば間違いないと思います。
USBメモリープレーヤーとしても優秀で、隙がありません。
アンプは下位モデルのPMA-600NE がBluetooth 対応ですので、Bluetoothが必要な場合は PMA-600NE もおすすめです。
技術の進歩は凄いですね。この価格でこれだけのシステムが揃えられる時代になりました。
2位 Nmode X-PM7mk2 定価 330,000円(税込)
こちらも、1位のDENONさんに負けず劣らず素晴らしいコストパフォーマンスです。
スピードでは既存のアンプ中最速に近いと思いますが、ここまで速くなるとそれを意識させません。唯々、ナチュラルな音が滑らかに流れてきます。
位相特性も良好で、空間表現力の高いスピーカーと組み合わせた際の、広く深い立体的な表現はまさにステレオ再生の到達点というイメージです。
エネルギーを失わずに、これだけ広い空間を再現出来るアンプはそう多くないと思います。
3位 SFORZATO DSP-Pavo + Soundgenic RAHF-S1 Diretta システム 総額 498,300円(税込)
単品で去年ランクインした SFORZATO DSP-Pavo ですが、今年はSoundgenicさんのNASとセットで再びランクインです。
Diretta 接続という新しい武器を手に入れたSFORZATO + fidata/Soundgenic さんは、データ再生の新しい潮流となるかも知れません。
今はまだPCオーディオに疲れた人がたどり着く場所という感じですが、来年には新しい展開も用意されていますし将来性まで見越しての3位です。
データ再生を楽に安定して楽しみたい場合の最有力候補になり得ると思います。
4位 chikuma PS-60TRB 定価 30,240円(税込)
電源タップは重要なアクセサリーですが、アンプ等に予算をつぎ込んだ後の、残った予算で購入されることが多くあまり予算が無い場合が多いです。その場合、このchikumaさんのタップは有力候補となります。
すっきりとしたクセの少ない音色で、アクセサリーによる色付けを必要としない方におすすめです。
chikumaさんとは直接お目にかかったことはありませんが、かなりの拘りを持つ方だと思います。インレット固定に使用されているアルミ合金 7075材削り出しの中空ネジなど、音はよいだろうと想像しても普通は作りません。
このネジを製作したというだけで、ただ者では無いと想像できます。
きっちりと、音を聴いてチューニングされているのが伝わる製品群で、さらに上のモデルもご予算が許せばおすすめです。いや、ぜひ上のモデルをご検討ください。
ミドルクラスモデルからは、コンセント固定ネジにまで 7075材削り出し中空ネジが使われます。上位モデルは組み立てネジまで、7075材削り出し中空ネジが使われますのでご予算が許せば
上位モデルまで行くのも有だと思います。
一点問題がございます。
おそらく、お一人で製作しているのだと思いますが納期が遅いです。さらに、納期を問い合わせても返事がありませんので、納期のお約束が出来ません。職人気質な方では無いかと想像しております。
ミドルクラスモデル以上の場合、下手すると2ヶ月くらい待たされますので、お急ぎの方にはおすすめできません。
ですが、電源タップはラックの後ろ等の普段目にしない場所に設置される事が多いため、一度購入してしまうと買い換えることがほとんどありません。
故障もしませんから、まさしく一生物の買い物となります。
そう考えれば、多少の納期遅延は許容されると思います。
「本当に良い物を作るには時間が掛かる。」
とお考えいただき、のんびりとお待ちください。待たされるだけの価値のあるタップだと思います。
5位 KEF Q550 定価 126,500円(税込)
オーディオ製品においてその音決めを行う担当者の責任は重大です。
その人の感性でそのメーカー製品群の音が決まるからです。
DENONさんが大きく変化したのも、そのサウンドマネージャーが替わったからですがKEFも替わりました。
今までKEFのサウンドマネージャーをしていた方は、ELACへと移籍しましたので新製品のELACスピーカーは以前のKEFのような音がします。
その新しいサウンドマネージャーの設計した 新Qシリーズと 新Rシリーズはそれ以前のKEFと全く違います。
以前のKEFの音が好きな方には合わないと思いますが、同軸ユニットらしい定位の良さとやや膨らみつつも制御された低域を持ちふっくらとした中に芯のある再生が可能です。
物としての作りも良く、この価格でこの仕上げのモデルは最近あまり見かけません。
ドロンコーン式で、バスレフポートがありませんので、後ろの壁に寄せて使う場合にも影響が小さく使いやすいです。
6位 日本テレガートナー M12 Switch Magic 217,800円(税込)
去年ご紹介しました M12 Switch IE GOLD の下位モデルとなります。
ハブに20万円!という思いもありますが、4万円のLANケーブルが2本付属しますから本体は12万円と考えれば納得??
上位モデルほどの凄みはありませんが、普通のハブからの変化は大きく、瑞々しく血の通ったリアルな再生となります。音質に与える影響はNASよりはるかに大きく、データ再生周辺機器群の中でも重要度の高い部分です。ハブだと考えると高く感じますので、超高級LANケーブルだとお考えください。
なんとなく安く感じませんか?
7位 Stereo Sound リファレンスディスクシリーズ 3,850円(税込)~
ステレオサウンドさんが製作している一連のディスクシリーズです。
名盤が多いので音楽性は保証されている上に、抜群に高音質です。
どれを購入しても後悔は無いと思います。
現存する最も状態の良いマスターテープを探すところから初めて、そのテープから手を加えずにダイレクトに製作されたマスターから作られていますので、とにかく鮮度が高いです。
マスターテープに起因するノイズやドロップアウトもそのまま調整せずに、コンプレッサー等のエフェクトも掛けずにマスターそのままの音が楽しめる貴重なディスクとなっています。
特におすすめは少し高価ですが DSD 11.2MHz シリーズです。
これも、同様の手法でマスターからダイレクトにDSD化されていますので、現在最もマスターに近い状態で入手出来る音源では無いでしょうか。
CDとは違うその圧倒的な情報量は、眼前を埋め尽くす空間情報として現れます。
既に同一盤を所有している場合でも購入する価値がありますので、ぜひ両方で比較試聴してみてください。
既存の盤が、いかに聴きやすいように調整されているかが、お分かりいただけると思います。
8位 B&W 603 定価 308,000円(税込)
B&W さんはユニットの色が黄色からグレーになって生まれ変わりました。
良くも悪くもあの黄色いユニットの個性に引きずられた感じのある以前のモデルから、グレーユニットの軽い挙動となり軽快なリズムを刻める、スピードの速いスピーカーへと生まれ変わりました。
音作りその物も大きく変化し、以前のドンシャリが押さえられ帯域バランスも自然な感じになりました。位相特性も良好で、素直で伸びやかなスピーカーです。
この価格帯のトールボーイスピーカーとしては、頭一つ抜け出したコストパフォーマンスを誇ります。
9位 Nmode X-CL3 定価 184,800円(税込)
Nmodeさんから本日発売のピチピチの新製品です。
もう年内は間に合わないかと思いましたが、ぎりぎり間に合いました。
1年以上前からプロトタイプとして、試聴会でお披露目されていましたからご存じの方もいらっしゃると思います。
X-PM3 が発売されたときから発売は予告されていましたが、それから1年以上待たされました。型番と画像ではこれが何か分かりませんね。これは、クロックです。
クロックには44.1KHzや48KHzを発振するクロックジェネレーターと、そのクロックジェネレーターへクロックを供給するマスタークロックがありますが、今回のX-CL3は何とその両方の機能を持ちます。
さらに、X-PM3やX-PM7mk2へ供給するためのスーパークロック機能も持ち、3種類のクロック出力をこの1台でこなします。
クロックジェネレーターのAntelope Audio OCXHD が 184,800円(税込)
マスタークロックの TEAC CG-10M が 150,000円ほど(オープン価格です)
スーパークロックの SoundWarrrior SWD-CL10 OCX が 99,000円(税込)
ですので、定価合計 433,800円(税込) 分の機能がこの1台に凝縮されています。
コストパフォーマンス抜群ですね。
1年間の開発推移を見ていましたが、カットアンドトライで音質を追求する姿勢は素晴らしいです。
1年前に既に完成していた物を、そこからさらに音質追求のために1年間掛けて練り上げてあります。
特に時間を掛けていたのが使用する発振子の選定です。
何種類もの水晶発振子を比較試聴して(データでは無く音で判断する点が好感が持てます)採用する発振子を決定していました。
発振子はデータだけで音は決まりません。
おすすめしているAntelope Audioで採用している発振子も測定データは普通で特別優れている訳ではありません。
ですが、比較試聴するとAntelope Audioのクロックは音が良いです。
これは、発振子のデータが良ければ音が良いと言うわけでは無い事を示していると思います。
以前、Antelope Audioの開発者と話をしましたが、印象的な言葉が耳に残っています。
「完璧な波形のクロックは音が良くない。」
この言葉が出てくるということは、測定もするが最後は耳で決めていると言うことなのだと思います。
クロック購入時の選択基準として上がる大きなポイントに、発振子の周波数精度があります。
これはDAC選定時に、使用しているDACチップを気にするのと同じ事だと思いますが
発振子にせよDACチップにせよ、それだけで音質が決定することはありません。
そこから出てくる信号をいかに正確に送り出す事が出来るかにこそ着目するべきだと思います。
話が逸れてしまいましたが、Nmode X-CL3 はきちんと耳で作ったクロックです。
3種類のクロック出力がございますので、スーパークロックをX-PM7mk2へ
クロックジェネレーターをDACへ、そしてマスタークロックを SOtM tx-USBultra12V/10Mへといった同時出力が可能です。
クロック3台分の機能が合体した多機能お買い得モデルです。
10位 Brinkmann Audio / Bardo Performance アームレス 定価 1,166,000円(税込)
画像はアームが付いていますが、アームレスでこのお値段です。
ベストバイのご紹介で100万円のモデルはどうかとも思いますが、周りを見渡すと数千万円のターンテーブルがありますので相対的にお買い得に感じます。
吉田苑のリファレンスプレーヤーでもあるこのターンテーブルは静かでエネルギッシュなサウンドが特徴です。
高いS/N比を持ち、よく手入れされた盤であればほぼ無音の中から音が立ち上がります。
エネルギーの再現性に優れ、太くパワフルでありながら繊細な表現も可能です。
組み合わせるおすすめアームは GLANZ MH-9B 定価 184,800円(税込)ですので、セットで 1,350,800円(税込)となります。
番外 GLANZ MH-124S Premium 2,750,000円(税込)
ベストバイコーナーに載せる価格ではありませんが、ここまでの音を聴かせてくれるならば値段は気にならなくなるかも知れません。
GLANZの最上位モデルで、予算度外視で最高の物を求める方へおすすめできる逸品です。
そして、その価格に見合うだけの満足感を得ることが出来ると思います。
私も、このアームを試聴するまでは 275万円のアームに関して懐疑的でした。
今の日本で物を作ることのコスト面での困難さは、十分に理解していますから、本気で良い物を作ろうとするとかなりの高額になることは理解出来ますが、それでもこの価格には疑問を感じていました。
12インチのロングアームですから、上でご紹介したBrinkmann Audioにはアームベースを作り直さないと搭載できません。そのため、店頭に置いてあった別のプレーヤーへ搭載して試聴しました。
そのプレーヤーは、角の取れた丸い音のするプレーヤーで、優しい音を出す事は出来ても差し込むような、鋭い音を出す事は出来ませんでした。
ところが、このアームを搭載した途端別物のように生まれ変わりました。
目の覚めるような爽快な立ち上がりと立ち下がりを持ち、アナログらしい太さを持ちつつその中にエネルギーが満ちています。
今にも弾けそうな、エネルギーに満ちた音が飛んできますがうるさくなく、快感のみが届きます。
これぞ、アナログの愉悦ではないかと感じた瞬間です。
まさかアームだけでここまでの支配力があるとは・・・驚きました。
価格が価格だけに、おいそれと導入できる物ではありませんが一生物と考えれば、悪くない選択かも知れません。