カナダのParadigmより新製品が輸入開始されました。
入門クラスシリーズのトールボーイ型である 3000F/6000F/8000F の3モデルです。

同シリーズのコンパクト2ウェイモデルである MONITOR SE ATOM は吉田苑でも人気があり
同モデルの鈴木氏チューニングモデルと合わせて、入門クラスの一番人気モデルとなっております。

入門クラストールボーイスピーカーは、コストの制約のためにキャビネットの強度が低くなり、ブックシェルフタイプと比較して、箱鳴りが大きく乗ってしまうため、個性の強い音になるのが普通です。
対して、ブックシェルフタイプは小さいため、キャビネネット強度が高く、結果として質の高い再生が可能となるため、同価格モデルの場合、小型スピーカーの方が高音質な場合がほとんどです。
この新製品もペア10万円台と、トールボーイスピーカーとしてはかなり安価な部類に入るため、箱鳴りの影響から逃れられず、残念な音になるのではないかと考えておりました。

ですが、結果は予想に反して高い完成度を持つおすすめスピーカーに仕上がっておりました。
ATOM も5万円 とは思えない、高いクオリティを持つスピーカーでしたが、今回ご紹介する 3000F は設計の難しいトールボーイかつ3ウェイスピーカーという難問を2つも抱えたモデルにあるにもかかわらず、高い完成度を誇る価格破壊モデルに仕上がっておりました。

内側が 3000F 外側が 6000F です。

仕上げは塩ビシートでしょうか?この部分で大きくコストダウンを図っているようです。
色は光沢白と艶消し黒の2種類です。

脚はスパイクを装着できるようになっており、手抜きはありません。

Paradigm MONITOR SE 3000F ペア/定価 110,000円(税込)

まずはトールボーイシリーズの中で一番小さな 3000F から試聴しました。
音は見事に小型モデル ATOM と同じです。

同一シリーズですから同じ音がして当たり前、と皆様お考えではありませんか?
実は、コンパクト2ウェイモデルとトールボーイスピーカーの音色を統一するのは至難の業でそう簡単に出来る事ではありません。
一般的には、同一シリーズでも小型モデルと、トールボーイモデルでは音が違うのが普通です。
その困難な音色の統一を、入門クラスで軽々とやってみせる Paradigm 開発陣には脱帽です。

もう一つ驚いたのが、トールボーイとは思えない引き締まった低域です。
箱鳴りの悪影響をほとんど感じさせずに、ナチュラルに低域が出てきます。
目をつむると、コンパクト2ウェイモデルが鳴っているのではと錯覚しそうなほど、見事に制御された低音が出てきます。

通常、入門クラススピーカーを購入されるお客様のご要望は、たっぷり低音が出るスピーカーをご希望される場合がほとんどです。

私自身、初心者の頃は低域をブーストさせて喜んでおりましたから、お気持ちは良く分かります。
その初心者をターゲットとした価格帯のスピーカーの音作りとは全く違い、低域を膨らませず有るだけをそのまま出してきます。

高域も同様で、色気をプラスしたり等の演出をほとんど感じません。
ある意味、マーケットを完全に無視した音作りとも言える異色モデルでもあります。
価格は入門クラスですが、出てくる音は玄人好みの渋い音作りとなっており音楽を聞く道具としての高い完成度を持ちます。

もちろん弱点もございます。
50万円クラスの高級モデルと比較すると、高域の抜けが物足りませんし、低域も、ある程度のところですっぱりと諦めてあり、欲張らないレンジ感となっております。
情報量も、上位モデルと比較すると少なくなっており、入門クラスとしての体裁をこのあたりで取っているように感じます。

仕上げは、塩ビシート貼りのただの四角い箱で、高級感はありません。
派手な音が出る訳でもありませんので、量販店等でスピーカーを大量に並べて比較試聴すると、埋没してしまい良さを発揮する事は難しいでしょう。
ですが、音楽を鳴らす道具として追求された質素な美しさという意味で、このスピーカーは光る物をもっていると思います。

入門者の方にももちろんおすすめしますが、音楽が好きな全ての方に聴いて欲しいスピーカーです。

Paradigm MONITOR SE 6000F ペア/定価 143,000円(税込)

次は、一サイズ大きくなりユニットも1個追加され 3ウェイ 5スピーカーという贅沢な構成の
6000F です。

このモデルも良く出来ていますが、3000Fを修行僧とするとこちらは普通の人のようなイメージです。
入門者の方には、こちらの方が好ましく感じるのではないでしょうか。

見た目通りに、低音が多目に出て3000Fのようなストイックなイメージはほとんど無くなります。
中高域もややマイルドになり、聞きやすくなります。

初心者さんや、AV用途、にはこちらがおすすめです。

8000Fはまだ試聴出来ておりませんので、試聴出来ましたらお知らせいたします。