オーディオグレードNASという新しいジャンルを切り開いた DELA さんのフラッグシップ新製品 N1 のご紹介です。

NAS とはネットワーク上に設置(LAN接続)する外付けHDD(SSD)です。
正式名称は Network Attached Storage といいまして、頭文字を取って NAS(ナス)と呼称します。

同様にUSB接続する外付けHDDもございますが、こちらはNASとは言いません。
USB接続という不安定な物を使いたくないために、オーディオ用途にはNASがおすすめです。

機能豊富で、外部クロック入力端子まで付いています。
試しに Antelope Audio 10MX を接続したところ、S/N比の向上が確認出来ました。

USBポートも 2.0 1口 に 3.0 が 3口もあります。

LAN(RJ45)ポートが2個
そして、流行のSFPポートまであります。
今回、SFPポートは試せませんでしたが、経験的に音質向上に寄与すると思います。

今回は試聴というより、出来る事が多いため検証に近い視聴となりました。

まず、USBポート 2.0 と 3.0 の比較試聴を行いました。
正確に言うと、USBケーブルに2.0ケーブルを使用しましたので、2.0 と 3.0 の回路違いによる音質差の検証ですね。
2.0 と 3.0 は理論値で約10倍の通信速度差がありますので、通信速度が早いほど音質が悪いという経験則から想像すると 2.0 の方が音が良い可能性があると考えておりました。
実際に試したのは、速度差では無くポートの回路(ICチップ)による音質差の検証です。
USB3.0 対応オーディオグレードUSBケーブルはほとんど存在しませんので、現実に沿った検証かと思います。

予想に反して 3.0 の方がわずかですが音が良かったです。
95点と100点くらいの差しかありませんので、ほとんど気にならないレベルの違いですが、3.0ポートの方がこの機材に関しては音が良かったです。
全ての機材で同様の結果が出るとは思えませんので、機会があればこの検証は続けていきます。

それでは、実際に試聴してみます。
始めに、NAS としての能力の検証です。
比較対象は、同メーカーの下位モデル DELA N50-H20 定価 198,000円(税込)です。
同一音源を両方のNASへ保存して、Roon にて試聴しました。

価格差を考えると、微妙な差です。
NASによる音質差は小さいと日頃から感じておりましたが、今回も同様の結果となりました。
N1 を100点と仮定すると N50 は90点はあります。
110万円の価格差を考えると、これは微妙な評価となります。
コストパフォーマンス度外視で、最高の物をとのことであれば、N1 + 10MHz クロック + 光SFPポート使用 となり、総額200万円弱になるでしょうが、最高のNASが入手可能です。

コストパフォーマンスを考慮した場合 NASは 20万~40万円くらいまでが美味しい価格帯になると思います。

では、このモデルの存在意義は何かというと、ネットワークトランスポート機能にあります。
HDD(SSD)内蔵のネットワークトランスポートとして使用可能で、同一機能を持った機材の中で頭2つほど飛び抜けた音質を誇ります。

このモデルは、USB接続によりUSB/DACと直結して使用可能です。
NASにこの機能を搭載した機材は DELA さんの他に fidata さんも持っておりますが、正直、それほど良い音がするというイメージは持っておりませんでした。
USB/DACと直結して音も出せるけれども、音質はおまけ機能レベルという認識でNASはNASとして使用してこそ真価を発揮すると考えておりました。

ですが、このモデルはUSB/DAC直結でも良い音がします。
LUMIN U2 MINI やSFORZATO DST-Lepus のUSB接続モードと勝負出来るクラスの音を出す事が出来ます。

そしてもう一つの機能として、DELAさんには Roon Ready 機能があります。

今回の試聴のハイライトですね。

試聴は、吉田苑リファレンスネットワークDACである Mola Mola Tambaqui DAC を使用して行いました。

Tambaqui DAC はUSB入力を持ちますので、Roon Ready接続のTambaqui DAC とRoon Ready接続のN1からUSB接続でTambaqui DAC へ接続での比較試聴を行いました。
DACはどちらも Tambaqui DAC ですので、ネットワークプレーヤー部の音質差を比較することになります。
試聴用の音源は N1 に記録した音源を使用しました。

ほぼ同じ音がします。
N1 と Tambaqui DAC 間にUSBケーブルを使用しますので、その分のクオリティ差しか出ていないように感じます。
Tambaqui DAC 100点と仮定すると、N1 + Tambaqui DAC は95点ほどです。
USBケーブルが無ければ、おそらく差はほぼ無いと思います。
Tambaqui DAC はRoon専用モードですので、そのクオリティに付いてこれる事に驚きましたが、よく確認して見ると、DELA の Roon Ready モードも Roon 専用モードとして動作しておりました。
高価ですが、Roon Ready 対応ネットワークトランスポートとして優秀だと思います。

最後に NAS の存在意義その物の検証を行いました。
ハイレゾストリーミング配信が行われる現代において、そもそもデータを手元に置いておくメリットがあるのかという点です。

もちろん、ストリーミング配信が行われていない、貴重な音源やDSD音源の再生のためには、手元にデータを保存する必要がございます。
その少量の音源のためだけに、オーディオグレードNASを導入するのか、汎用NASでも良くない?とお考えの方もいらっしゃると思います。

オーディオグレード NAS は高価ですので、その投資に見合うかどうかの判断の一つの要素として、今回の試聴結果をご参考いただければと思います。

Roon は同一アルバムのバージョン違いを一覧表示する機能があります。
それは、手元のNAS内データやストリーミングデータを含めて統合されて表示されます。

今回は Eagles 「Hotel California」の 192KHz 24bit 音源を使用して、手元のNAS保存データとストリーミングデータで比較試聴を行いました。

こちらが NAS 保存のデータです。

そしてこちらが、ストリーミングサービス TIDAL のデータです。
画像では分かりやすいように分けて表示しましたが、実際の操作端末上には同一画面に全て表示されます。

TIDAL 側は MQA ですので、厳密に同一データではありませんが今回はこの2つのデータでの比較試聴を行いました。

N1側は普通のRJ45接続で、外部クロックも使用しないプレーンな状態での比較試聴です。

結果は、N1 内蔵データの方が低域方向のエッジが立ち密度感が高いです。
中高域に関しては、本当にわずかですが抜けや情報量がN1の方が優秀です。
点数を付けると N1 100 点に対して ストリーミング(TIDAL)90点でしょうか。

この差に100万円の価値があるかどうかは、受け取る方次第だと思いますので、NAS導入における、コスト配分の参考にお使いください。