LUMIN の高級ネットワークトランスポートである U2 を試聴しました。
2月にご紹介した ネットワークプレーヤー T3 からDAC部を取り外して、電源を強化したモデルのようです。

T3 はスイッチング電源でしたが、この U2 はトロイダルトランスを使用したアナログ電源となっております。
必ずしもアナログ電源が良いとは限りませんが、プリアンプやDAC等のライン出力モデルに関しては、アナログ電源の特徴である S/N比 の良さが良い方向に影響する場合が多く、このモデルでもその良さを強く感じました。

横幅 350mm の LUMIN 標準サイズで、重量 6Kg と軽量です。
大きく重いほど良いという時代が数十年続きましたが、最近になってようやく軽くて音の良い物が認められるようになってきました。
同じ音質ならば、小さくて軽い方が設置が楽で良いと思います。

そういう意味では、データ再生系の製品は軽量、コンパクト、高音質と3拍子揃ったモデルが多数ございますので、良い時代になったと思います。

逆さまの画像で気持ち悪いかもしれませんが、ひさしの影響で上手く写真が撮れませんでしたので、逆さまにして撮影して画像をひっくり返しました。申し訳ございません。

ネットワークトランスポートですので、アナログ出力はございません。
左から AES/EBU 、 BNC 、 RCA 、 OPTICAL 、 USB(DAC接続用) 、USB(ストレージ接続用)2系統 、SFPポート 、 RJ45ポート
と並んでいます。

左から2番目の BNC 端子はクロック用では無く、デジタル出力端子です。
LUMIN は昔から外部クロック入力を持ちません。
これは、外部クロックの力を借りなくても内蔵クロックで十分に良い音を出せる自信の表れなのだと思います。
実際、出てくる音は外部クロックの必要性を感じない立派な物です。

試聴は吉田苑リファレンスネットワークDACである mola mola Tambaqui dac へ USB接続して行いました。

真っ先に行った事は、USBポートの比較試聴です。
わざわざ 「USB TO DAC」 とDAC接続用の専用ポートを設けていますので、他の2ポートと回路が違うのでしょう。
とても気になりましたので、通常ポートと比較試聴してみました。
なるほど、かなり違います。
通常ポートでも良い音がするのですが 「USB TO DAC」 ポートへ変更すると、静けさが上がります。
データ再生のキモはこの静かさの再現性だと考えておりますので、個人的にかなり評価が上がるポイントです。

せっかくですので、最近良く出るSN比(静かさ)がなぜ音質に影響するかをご説明させていただきます。
SN比 とは、信号対雑音比(signal-to-noise ratio)の略です。つまり、音楽信号に対してノイズ(音楽信号では無い機材や環境から発生する信号)がどれだけあるかを表します。

SN比が高いと、ただそれだけで音が良くなります。ただ、フィルターを入れてSN比を稼ぐと数値上のSN比は良くなりますが、音楽信号まで無くなりますのでオーディオ的にはつまらない音になってしまいます。
真の意味でSN比の良いシステムは音楽信号はそのままに、ノイズ成分が聴感上ゼロになるシステムです。

簡単な方法では、音楽信号を入れずにアンプのボリュームを上げてみてください。
スピーカーから「サー」というノイズが出てくると思いますが SN比 の高いシステムはこの「サー」がフルボリュームにしてもほぼ出ません。ただ、この方法の場合、フィルターでSN比を上げている場合でも同様の結果が出るので簡易的な方法ですね。

では、なぜSN比が高いと音が良いのかですが、録音現場の空気を再現出来るようになるからです。
クラシックのライブ録音など分かりやすいですが、演奏が始まる瞬間、指揮者がタクトを上げた瞬間の「静寂の瞬間」が再現出来るようになります。
音楽を聞く上で、この「静寂の瞬間」(もちろん曲中にもあります)は大変重要で、この瞬間を再現できるようになるとより深く音楽に没入できるようになります。
音を出す道具なのに、音が出ない瞬間が重要という、逆説的な話ですが、実際に体験していただけると一度で納得出来ると思います。

少し乱暴ですが、簡単に言うと「極小音量が聞こえる」ということだとお考えください。
アーティストは本当に細かなことを行っています。

私のような素人から見ると、なぜそこまで拘るのか?と感じるような言葉は悪いですが「些細なこと」にも拘って演奏しています。
その拘りは、音の消え方や、消し方、弦から指を外す瞬間の一瞬の間、等多岐に渡ります。
その、一見些細なことのように感じる細かなテクニックは、SN比の低いシステムだとノイズに埋もれて聞こえなくなる事がありますので、可能な限りSN比を上げたいのです。

そして、最近のデータ再生システムは一昔前と比較して、かなりSN比が上がっています。
PCオーディオが発明(PCで音楽が再生出来るようになってから)されてから既に30年ほど経過して各社共に、かなりノウハウの蓄積が出来ています。
そのため、ピュアオーディオの新しい再生方法の一つとしてデータ再生はアナログレコード、CDプレーヤーに肩を並べる存在に成長しています。
特に「静寂の瞬間」の再現性に関してはアナログや、CDを越えたかもしれません。
ぜひ、この「静かなオーディオ」の世界を体験してみてください。

大きく、横道に逸れてしまいました。
LUMIN U2 の話の戻ります。

通常ポートよりDAC専用ポートの方がSN比が良くなりますので、以後の試聴はDAC専用ポートにて行いました。
次に試したのは、LUMIN最大の売りである(私がそう考えているだけです)Roon ONLY モードです。

最近は他社さんの製品にも採用実績の多い Roon 専用モードですが、LUMIN さんの専用モードは他社さんより効果が高く感じます。
まず、通常モードで視聴後に Roon ONLY モードへ切り替えました。
これは良いです。
SN比が大きく改善され、音数が多く、中域の濁りが無くなります。
エネルギー密度も向上しますし、レンジも広くなります。
このモデルはこのモードに固定して Roon 専用機として使うのがおすすめです。

Roon 専用トランスポートとして考えた場合、100万円以下ではこの U2 が最も高音質だと思います。
データ再生は線が細いとイメージしている方が多いですが、この U2 の Roon ONLYモードは全くそんなことはありません。太くエネルギッシュでありながら静かです。

もう少し、手頃な価格であれば良かったのですが・・・
この価格まで頑張れる場合は、文句無しにおすすめできる良質なネットワークトランスポートだと思います。