カナダのスピーカーメーカー Paradigm(パラダイム)の製品が輸入開始されました。
まずは、上位モデルからということでしょうか。
現在は、最上位の PERSONA シリーズのみが輸入されています。

日本には初上陸ですが、1982年創業のカナダを代表するスピーカーメーカーの一つです。

意欲的な設計で、大変興味深かったため早速試聴してみました。


トールボーイタイプの PERSONA 3F です。

設計から製造までを完全にカナダの社内工場で行う、本当の意味のスピーカーメーカーで、大変高価なモデルですが、ユニットやキャビネットの設計を丁寧に行いその金額に見合うだけの価値がある見事に作り込まれたモデルだと感じました。

カラーバリエーションも豊富でレギュラーモデル 5色 にカスタム設定で 18色 から選択可能です。
ユニット前面の音響レンズとフロントバッフルの色も指定可能で、様々な組合せからお好みの一台を選択可能です。
車のホームページでお馴染みの様々な色指定が可能なシステムでお気に入りの組合せを見つけてください。

PERSONA 色指定デモ

3ウェイ 4スピーカーのバスレフ型で、底にバスレフポートが開いています。

フロントバッフル(画像のグレー部)は金属製で、重要なフロントバッフルの強度は十分です。

特筆すべき特徴は、ユニットです。
ツィーターとミッドレンジの振動板はベリリウム製です。
物性面で見ると、軽量で硬いベリリウムは振動板として理想的な素材なのですが、加工が難しくコストが高く付くため量産に不向きで、スピーカーユニットとしての採用例はあまり多くありません。
その加工の難しいベリリウムでミッドレンジ用の直径 178mmという大口径ユニットを搭載したのが最大の特徴です。

ベリリウムのもう一つの特徴として、音速が速いという事があります。
音速の早いユニットと言えば、現在の吉田苑リファレンススピーカーである DIATONE DS-4NB70が採用している NCV-R 振動板 も音速の速さが売りです。
そのNCV-R 振動板の音速(伝搬速度) 6300m/秒 に対して、今回のベリリウム振動板の音速は12900m/秒 とさらに高速です。
既存の高速伝搬速度素材スピーカーの弱点は、それ以外の素材を使用したウーハーユニットとの速度差から来る違和感です。
DIATONE DS-4NB70 の凄さは、2ウェイモデルの両ユニットを高速な同一素材で揃えたことでその速度差を無くしている事だと考えております。

今回の PERSONA 3F は3ウェイ中ミッドレンジまでがベリリウム振動板採用で、ウーハーはアルミ製です。
ですので、素材の違いによる違和感があると予想しておりましたが、実際に音を出してみると見事に統一され、違和感をほとんど感じません。
ウーハーに耳を近付けると、かなり低い帯域で使用しており、重要な帯域はほとんどがベリリウム振動板であるミッドレンジ以上から出ています。
構成としては3ウェイですが、2ウェイ+スーパーウーハーのようなイメージで素材の違いをほとんど感じさせません。

音質は、華やかな中高域に最近ではめずらしい重みのある軽い低音が特徴で、低音の出方に関しては昔のDYANUDIOを思い出します。
重みのある、軽い低音という変な表現になってしまいましたので、もう少し詳しく説明します。

低域の量感はトールボーイ型としては、かなり控えめです。
低域を肥大させたり、滲ませたりは一切行わずに、あるがままに低音を出してきます。
こう書くと、エネルギーの伴わない軽い低音のように感じますが、量は出ていませんがエネルギーは出ています。
音に重みはあるのです。
エネルギーを伴った、力のある低音が軽く出てくる感じです。
量では無く、質を追求した低音と言っても良いと思います。

この極上の低域をベースに、ベリリウム振動板から放たれる華やかでキレのある中高域が乗ってきます。

久しぶりに、手放しで褒めることが出来る高級スピーカーの誕生です。

DIATONE DS-4NB70 はモニター調で、気難しい測定器的な面がありますが、Paradigm PERSONA 3F はオーディオ用スピーカーとして、高い完成度を誇ります。
セッティングにあまり神経質では無く、置くだけである程度の性能を引き出すことも出来、長時間鳴らしていてもやかましくありません。


ブックシェルフタイプの PERSONA B です。

PERSONA シリーズ唯一の2ウェイモデルです。
何とも微妙な価格設定で 1,620,000円(税込)と トールボーイタイプの PERSONA 3F と 30万円ほどの価格差しかありません。
スタンドに20万円かけると、その差は10万円まで縮んでしまいます・・・

では、このモデルに存在意義が無いのかと言われると、そんな事はございません。
このモデルのメリットは同一素材振動板で完結していることです。
音速(伝搬速度) 12900m/秒 という高速振動板のみで構成されたこのスピーカーは、異種素材が介在しないため、2つのユニットの統一感が高く、理想のスピーカーと言われるフルレンジのようなワイドレンジスピーカーを体現しています。

凝った形状をしており、横から底部を見ると金属ベースに対して斜めにキャビネットが設計されているのが分かります。

音質は、小さいのに トールボーイタイプの 3F よりさらに重い低音を持ちます。
下方向のレンジはそれほど欲張っていませんが、その分しっかりとエネルギーが込められた重い低域が軽く出てきます。

小さいことによる最大のメリットである、定位の良さもあり 3F と悩ましい選択となりそうです。

これだけ高価なモデルとなると両方共展示するのは厳しいので、どちらにするか悩みましたが、トールボーイタイプの 3F を常設展示として導入することにしました。

モニター調のDIATONE DS-4NB70 とはひと味違う、オーディオ用スピーカーとしてワクワクする聞いていて楽しいスピーカーです。
トールボーイタイプの展示機がございますので、ぜひ試聴にお越しください。