私がPCオーディオに取り組みはじめてから10年以上経過しました。
当時はWindows XP が主流の時代でした。懐かしいですね。
あの頃はPCオーディオ黎明期で、全てが手探り状態で辛うじて音が出ても安定せず、音も悪いという時代でした。
それから、10年ほどでピュアオーディオとしての地位を確立し、さらに進化を続けています。

想像してみて下さい。
自宅にCD が 450万枚置いてあり、検索機能が付いていて気軽に聞きたい音楽が聞ける環境を。
音楽好きとしてこれ以上の幸せは無いと思います。
この環境が実現できる時代になったのです。

現在の主流は音源をPC内部や、外付け記憶装置(NAS)に記録して、それをネットワークプレーヤーや
PCを使用して再生するスタイルです。
日本ではまだまだこのスタイルが主流ですが、世界では新しい流れが育ち始めており、音源はダウンロードして手元に保存するのでは無く、ストリーミング再生が主流になりつつあります。

ストリーミング再生とは、データの保存場所は配信サイト側に置いてあり、リアルタイムにネット上から再生する方法です。
この方法ですと、データを保存する必要がありませんので手元にデータベースを構築する必要がありません。
今まで家庭内に保存していた音源データが、配信元へ移動したとお考えください。
そして、何よりこの方法が魅力的なのは数千万曲というライブラリへアクセスする事が出来るようになる点です。

国際レコード産業連盟の発表によると、2015年にデジタルデータでの売上がCDなどの物理メディアの売上を上回り
2016年には音楽全体の売上の半分を配信が占め、その内の半分以上はストリーミング再生での売上となっています。
ストリーミング再生はこれからも音楽配信の主流として飛躍的に普及していくと思います。

今まで、ストリーミング再生は圧縮音源しか配信されていなかったため、便利だけど音質はそれなりという
位置付けでしたが、最近は高音質化が図られるようになり、ついにCDと同等の 16bit 44.1KHz での配信を行うところも出てきました。
それが今回ご紹介する 「TIDAL」です。
「TIDAL」というとドイツのスピーカーメーカーが思い出されますが、全く関係の無い会社です。

残念ながら、複雑な日本の音楽権利関係の影響から日本での正式サービスは未定ですが、ある方法を使い契約さえしてしまえば、それ以後は普通に日本から接続可能になります。

料金は契約する国によって変化しますが、アメリカですと高音質版(16bit/44.1Khz)で月々19.99USD(2,400円ほど)です。
私は香港で契約したので月々 96HKD (1,400円ほど)でした。
契約する国によって、権利の影響で聞ける曲に多少の影響があるそうですので、聞きたいアーティストがいる国で契約するのが、良いかもしれません。
月々2,000円ほどで、数千万曲のCDクオリティ音源データベースへアクセスし放題になるという、音楽好きに取って夢のようなサービスです。

肝心の音質ですが、検証のために段階を踏みつつ試聴してみました。
使用システムは以下になります。
PC エスプレッシーボサウンド改良版
DAC Nmode X-DP10

第一段階
Internet Explorer 上で「TIDAL」のサイトへ直接接続しての再生。
この方法では、PCで設定してある規定の再生デバイスを使用して再生されます。
今回の場合は規定のデバイスとしてある Nmode X-DP10 へデータが送り出されて、DA変換されます。

実はあまり期待していなかったので、はじめて音が出た瞬間は驚きました。
十分に良い音が(期待以上)出てきています。
もちろんじっくり聞けば、解像度の甘さや低域方向の甘さ等不満はありますが、あまり期待していなかった分
驚きが勝りました。
特別な再生ソフトを使ったわけで無く、単純にネット接続してブラウザ上から音を出しているだけで、このクオリティです。
BGM用途でしたら何の不満も無いと思います。

第二段階
「TIDAL」には専用再生ソフトが用意してありますので、それをダウンロードしての再生です。
先ほどと同じで、出力先は規定のデバイスとなります。
ブラウザ再生と比較すると2ランクほどクオリティアップします。
すでにオーデイォクオリティといって良いレベルまでになっています。

第三段階
「TIDAL」は何と「JPLAY」を使用しての再生が可能です。
正確には「JPLAY」の機能の一つである「JPLAY Streamer 」が「TIDAL」に対応しているのです。
操作のためにアンドロイド専用アプリである「BubbleUPnP」が必須ですので、アンドロイドタブレットが必要です。
アンドロイドスマホでも良いのですが、せっかくですので大画面タブレットの導入をおすすめします。
「TIDAL」を「JPLAY」経由で再生すると、「TIDAL」専用ソフトからさらに一歩進んだ再生が可能です。
ほぼ、CDクオリティといって良いのではないでしょうか。
CDプレーヤーと比較試聴しても一長一短で優劣付けるのは難しいです。

もう一点「TIDAL+JPLAY」再生の良い点がございます。
「JPLAY」を再生ソフトとして使用すると、複雑怪奇で困難な設定作業が必要ですが、「TIDAL」再生に使用する分には
ほぼ何もしなくて大丈夫です。
「JPLAY」をインストールして、最初に一度だけ設定画面で送り出すDACを指定し
お好みに合わせて出力設定を変更するだけ(難しければこれも行う必要はありません)です。
一度設定してしまえば、以後は全て自動起動ですので何らかの不具合が起こらない限り設定画面を開く必要はございません。
最も簡単に「JPLAY」の高音質再生を手に入れる方法だと思います。
「JPLAY」日本語サポートは、日本での正式サービスが始まっていないため「TIDAL」に関してはサポートを
行わないと明言してありますので、この点はご注意下さい。

最後に、オーディオ的な対応を一切行っていない普通のWindows10 ノートPCで再生してみました。
「JPLAY+TIDAL」での再生ですが、十分に高音質です。
気軽に始めるネットオーディオ入門としてもおすすめです。

「TIDAL」は日本での正式サービスが始まっていないため J-POP をメインで聞く方には物足りないかもしれませんが
海外で人気のアーティスト きゃりーぱみゅぱみゅ / MIYAVI / L’Arc-en-Ciel / MAN WITH A MISSION / Perfume 等
は完璧に網羅されていますし、洋楽ならば無いものを探すのが難しいほどの充実ぶりです。

私は、ミュージカルが好きなのですが同一演目で ブロードウェイキャストとウィーンキャストの両方が聞けることに
歓喜しました。
また、フルアルバムは出していないですが、多数のアルバムに出演しているような人の曲を検索する事も可能です。
ですので、アルバムの中に欲しい曲が1曲しか無くて、購入を躊躇するようなことも無くなりますし、ありとあらゆるジャンルの音楽が
無尽蔵に存在するので、新しい出会いにも困りません。
これは、新しい音楽再生の形だと思います。

なお、日本語に対応していないため検索の際はローマ字での検索となります。
例えば 「宇多田ヒカル」の場合は「utada hikaru」もしくは「hikaru utada」 で検索します。

注意点がございます。
このサービスは日本で正式にサービスされておりません。
雑誌等でも普通に紹介されていますので、紹介することは問題無いと思いますが実際に契約することに関しては
個人の責任において行って下さい。
吉田苑として契約方法をお伝えすることはありません。

音楽がお好きな方にとって、このサービスは夢のようなシステムです。
日本での正式サービスは始まっていませんが、個人の責任において契約する事は可能ですので
ぜひ試してみてください。
一度体験してしまうと、後戻りできないと思います。