今年最初の更新は今年の目玉になるかもしれない、新しいネットワーク接続の研究です。
PCオーディオであれネットワークオーディオ(ネットワークプレーヤー)であれ、ネットワークへの接続は必要です。

一部のマニアックな方は、ネットワークへ接続すると音質劣化に繋がる、と排除する場合もありますが、一般的にはネットワークへの接続は必須です。

データ再生に興味がある方は去年くらいから 「SFP 光接続 」という単語を耳にされているのではないでしょうか。
何だか面白そうだけど、良く分からない。という方が多いと思いますので、簡単に SFP をご説明させていただきます。

SFP(Small Form Factor Pluggable)とは正確には、光ファイバーや、一般的な銅線のLANケーブル等の色々な規格に一つのポートで対応出来るよう設計されたポートです。
つまり、SFPその物はただの受け穴とご理解ください。その穴へ、対応したモジュールを差し込むことによりそのモジュールに対応した規格を使えるようになります。

つまり、最近話題の「SFP光接続」とはSFPポートへ光モジュールを差し込み、機器間の通信を銅線のLANケーブルでは無く、光接続する事により、ノイズを遮断するという考えです。
銅線のLANケーブルは必ずシールドされており、そのシールドは機器のグランド側へ接続されます。

そのため、複数の機材を接続する事が必須のデータ再生の場合、このシールドを介したノイズから逃れることが出来ません。

そこで目を付けられたのが、シールドの必要無い光接続によって機器間を接続する事によってそのノイズを完全に切り離すことが出来るということです。

この機材は SPEC RMP-UB1SFP という Diretta USB ブリッジです。
また難しい機材が出てきましたが、あまり難しく考えずに 「光をUSBへ変換」 する機械と捉えてください。左側の SFPポートへ光接続でネットワークへ接続し、右側のUSBポートから出力してDACへ接続します。

このようにモジュールを差し込んで使用します。
今、差し込んでいるモジュールはRJ45用(普通の銅線LANケーブル用)です。

このように、普通のLANケーブルを接続する事が出来ます。

そしてこれが 光モジュールを使用した場合です。
このように、差し込むモジュールにより様々な規格に対応出来るのが 「SFPポート」のメリットです。

そしてこれも同じく光接続モジュールを使用した接続です。
お気付きでしょうか、光ファイバーの数がこちらは1本です。

SFP光接続には、大きく分けてシングルモード(光ファイバー1本)とマルチモード(光ファイバー2本)があります。
そして、このモジュールや接続方法(シングルかマルチ)、さらに光ファイバーの長さによって音質が大きく変化するのです。

やっと本題に入ります。

今回は、その「SFP光接続」をする際に使用する方式とファイバー長を探っていこうと思います。

今回のテスト環境です。
スピーカーのすぐ後ろの床に並んでいる機材でテストを行いました。

●スピーカー DIATONE DS-4NB70
●アンプ Nmode X-PM7Mk2
●DAC Nmode X-DP7

●NAS fidata HFAS1-XS20
●ハブ DELA S100
●USB Bridge SPEC RMP-UB1SFP

アンプのボリュームは固定で、一度も触っておりません。
この環境で、接続方式とファイバー長を変更しつつ試聴しました。

試聴に使用したモジュールと光ファイバーです。
光ファイバーは長いほど音が良いという謎情報がありましたので、1m、3m、5m、20m のファイバーを用意しました。

マルチモード用のモジュールと光ファイバーです。

光接続する場合は、送り出し側(ハブ)と受け側(ネットワークプレーヤーやブリッジ)に各1個ずつ計2個の光モジュールが必要です。
ここには3個有りますが、残り1個はRJ45用です。

シングルモード用のモジュールと光ファイバーです。
こちらも同様に光モジュール2個とRJ45モジュールとなります。

まず基準となる標準的な接続から始めます。
今回使用したfidataのNASはUSB接続でDACと直結出来る機能がありますので、まずはこの組合せです。

●NAS — USBケーブル —

十分楽しめますが、掛けたコストを考えると少し不満の残る組合せです。

次にSFPポートへRJ45モジュールを差し込み、普通のLANケーブルを使用しての試聴です。

●NAS — LANケーブル — ハブ — LANケーブル — ブリッジ — USBケーブル —

SPECのUSBブリッジが入ったことによりDiretta接続となりましたので、単純比較は出来ませんが、情報量が増え、解像度も上がり空間も大きく広がります。
この接続が普通のLANケーブルを使用した基本接続となりますので、これと比較してどうなるかがポイントです。

モジュールを光モジュールへ変更して光接続でのファイバー長さ違いです。
接続は以下のようになります。

NAS– LANケーブル — ハブ — 光ファイバー –ブリッジ — USBケーブル –DAC

●マルチ 1m.wav

●マルチ 5m.wav

●マルチ 20m.wav

●シングル 1m.wav

●シングル 3m.wav

●シングル 20m.wav

どの方式、ファイバーの長さであれ通常のLANケーブル接続からかなりの音質向上が感じられます。

マルチモードは 20m の物が最も良かったです。これは今までのアナログなオーディオとは全く違う結果で驚きました。
長くなるにつれて、滑らかさが増し音像が安定します。マルチ特有の個性を感じます。穏やかで丸みを帯びた表現となり、ふくよかで温かみを感じる表現が特徴です。

シングルモードは少し違う結果となり 20m より 3m の物が好ましかったです。
1m よりは 20m が良かったので、シングルにせよマルチにせよある程度長めの方が良い結果が出るように感じます。
こちらは、よりストレートに音が出てきます。曖昧さが無くなり、フォーカスがぴったりと合うようになります。

マルチモードとシングルモードは好みが分かれるところでしょうか。
女性ヴォーカルにはマルチが合いますし、楽器の個性を聞き分けるような場合にはシングルが合うと思います。

最後に、RJ45 モジュールのメーカー違いの比較です。

●fidata-LAN-S100-LAN-SPEC-USB-DP7 dir.wav

●fidata-LAN-S100-LAN-SPEC-USB-DP7 FS.wav

全く同じ接続方法で、RJ45モジュールのみが違います。
同じ機能を持ったRJ45モジュールですが、製造メーカーにより大きな音質差がある事が分かります。

この結果から考えると、上で行ったシングルとマルチの比較試聴も方式の違いの音質差なのか、モジュール製造メーカーの違いによる音質差なのか判断に迷うところです。

ですので、どちらが良いと言う結論は出せませんが、SFP 光接続のメリットは明確に判断できる結果となりました。

現時点でSFPポート搭載の機材はそう多くありませんが、これから新規導入される場合の大きな判断材料になるのではないでしょうか。