去年最後の日誌で速報としてお伝えした DEVIALET EXPERT 140 PRO ですが、上位モデルの EXPERT 220 PRO を常設展示機として
導入して、ここ数日じっくりと鳴らし込んでみました。

素晴らしいアンプです。
美しいデザインにつつまれたコンパクトな筐体から、信じられないほど高密度なエネルギーが出てきます。
ただ正確なだけで無く、上品な薄化粧が施された音色は何時間でも音楽に浸ることが出来る快感で溢れています。

鏡面仕上げのため鏡の写真のように見えますが、アンプです。

こうなるとどこにアンプがあるか分かりませんね。
手前の列の中央部右側、丸い物が映り込んでいるのがアンプです。

先日行った試聴会でのセッティング状況です。
スピーカーはカナダ Paradigm 最上位シリーズの PERSONA 5F を使用しました。

背面の入出力端子部です。
仕方ありませんが、薄型アンプの弱点でパーツ実装面積が狭くかなり窮屈です。ですが、各端子に割り振られる機能を変更出来るため実用上困ることは少ないと思います。Line(RCA)入力端子を同軸デジタル入力へ変更したり、フォノ入力をLine入力へ変更したり等柔軟に対応可能です。

全ての設定とケーブル類の接続が済めば、ここはカバーで隠れます。

音量調整と入力切替、イコライザーカーブやトーンコントロール等の調整はこのリモコンで行います。見た目以上に多機能なリモコンです。
このアンプで出来る事を箇条書きにしてみます。

■プリメインアンプ(プリアンプとしても動作可能)
●USB/DAC
●ネットワークプレーヤー(Roon Ready対応)
●フォノイコライザー(MM/MC対応 / 13のイコライザカーブから選択可能)

本来は4台の機材が必要なところを、このコンパクトな筐体に全て詰め込まれています。そして、そのそれぞれの機能は単体機材にひけを取らないほど高性能に出来ています。

ひとつずつ細かく説明させていただきます。

■プリメインアンプ
このモデルの中核たるアンプ機能です。ワイドレンジアンプで上から下まで過不足無くきれいに出してきます。
低域方向のグリップ力が高く、良くはずむ低域をベースとして透明度の高い中高域に程よい色気を乗せたイメージです。
単純にアンプとしてみてもその価格に見合う、満足度の高い再生が可能ですが、さらにこのアンプにはSAMという、スピーカーの特性に合わせたアンプへと進化出来るモードがございます。

メーカーホームページへ行くと、対応スピーカー一覧が掲載されていますが、その数は日々増えていっています。
以下リンク先で、対応スピーカー一覧が確認出来ます。リンク先の右側「ALL Brands」をクリックして、メーカー一覧よりご確認ください。

https://www.devialet.com/ja-jp/expert-pro-sam-ready-speakers/

このSAMの効果は魔法のようです。
今回の試聴会で使用した PERSONA 5F もデータが用意されていますので、SAMの有り無しで比較試聴を行いました。

SAM無しでも十分によい音で鳴りますが、SAMを入れると低域の表現力がグッと上がります。十分制御出来ているように聞こえていた、ウーハー領域の制動力が突然倍増したかのように力がみなぎります。
さらに、滲みが減り、透明度が上がります。レンジも上下共に拡大し、よりナチュラルになります。ユニット同士の音のつながりも向上し、各ユニット間の統一感が増しツィーターからウーハーまでの一体感が向上します。

結果として出てくる音は大幅なクオリティアップを果たします。これは、試聴したお客様も皆驚かれていました。
スピーカーの個性はきっちりと残したまま、クオリティと力感が上がりますのでスピーカーの個性を殺すようなこともありません。
この機能は今まで世に存在しなかった物で、オーディオ進化の一つの形では無いでしょうか。

■USB/DAC
こういう使い方は少ないとは思いますが、単体DACとしての能力を見るためにCDトランスポートから同軸デジタル入力とPCからUSB接続をしてプリアウトから出力させて他のアンプで試聴を行いました。

■同軸デジタル入力
やや解像度が甘く、エッジが僅かに丸くなる感じですが、十分良いDACです。当たり前ですが、アンプの音色との統一感があり高いクオリティを持ちます。耳当たりの良い心地良い音色を持ちつつ、きっちりと情報を出してくるタイプです。

■USB接続
PCからJPLAY FEMTO で再生しました。動作は安定しており、音切れ等不安定な挙動はありません。
JPLAY FEMTO が本来持つ鋭い切れ味と、高い解像度の本領発揮とまでは行きませんが、多機能アンプの内蔵DACと考えると、驚くほど高音質です。
一点だけ残念なのですが、DSD は 2.8MHz までしか対応しておりません。このアンプ唯一の残念な点です。

■ネットワークプレーヤー
まずは通常のUPnP接続での試聴です。良くある、普通のネットワークプレーヤーの音質です。
悪くはありませんが、ベールが掛かった透明度と抜けの悪い音でBGM用途以上に使うには少し辛い物があります。

次に、このアンプの目玉機能の一つである「Roon Ready」機能を使用してRoonで再生します。
Roon Ready とは、UPnP/DLAN や OpenHome とも違うRoon独自のネットワーク接続規格で、Roon が認証した機材にRoon Ready認証を行い、正式に対応していることを公表しています。

このRoon Ready での再生は素晴らしいです。DEVIALETでのデジタル音源再生は Roon Ready を使うべきだと感じました。
メーカーもこの点を理解しているようで、このアンプを購入すると Roon の年会費をプレゼントしてくれるキャンペーンを開催中です(在庫限り)

今回の件で分かったことがあります。
ネットワークプレーヤー再生時についてまわる同様の個性である、透明度が低く抜けが悪いという共通の弱点は UPnP という規格の音だと思います。
Roon Ready や Diretta のような新しいオーディオ規格伝送では、UPnP のような個性が無く上質なUSB接続システムと同等のクオリティを持ちます。

エスプレッシーボサウンドPC + JPLAY FEMTO + Nmode X-DP7 (USB接続システム)からライン接続でDEVIALETへ接続した時とエスプレッシーボサウンドPC + Roon Core + DEVIALET(Roon Ready接続)はほぼ同等のクオリティでした。

シンプルな形で比較するために両システム共にアクセサリー系は一切使用しませんでした。
USB接続システムには他にJCAT USB CARD や SOtM tx-USBultra12V/10M 等の効果の大きなアクセサリーがあるので、これらを使えばUSB接続の方が高音質ではありますが、そこまで攻める場合で無い限りは、Roon Ready + DEVIALET システムが気軽に楽しめて良いと思います。

■フォノイコライザー
これがまた良く出来ています。
MM/MC対応で、設定で入力インピーダンスやコンデンサの容量を変更出来ます。(この機能のみ下位モデルの140 Pro は非対応です。)さらにイコライザーカーブを13種類(DECCA や EMI 等)からリモコンで選択可能です。

DENON DL-103 で試聴しましたが、このカートリッジの特徴である中域の厚みや力強さを正確に伝えてくれます。
現代風なワイドレンジカートリッジを使うと、まるでCDのようなワイドレンジできれいな音も出ました。素直で、対応幅の広い見事なフォノイコライザーだと思います。

アンプ単体だけとして見てもその価格に十分納得出来る上に、USB/DAC と ネットワークプレーヤー、フォノイコライザー
まで付いてきて、その個々の能力はおまけでは無く単体モデルに匹敵する物を持っているという大変お買い得なアンプとなっています。

システムをコンパクトにしたいけれども、音質に妥協したくないという方や、気軽にしかし高音質にデジタル音源を再生したい方
スマートでおしゃれなシステムを構築したい方等々、様々な方におすすめできる優秀なアンプに仕上がっています。